アバンセライフサポート・ファウンダーのつぶやき

日本の福祉とは...考え続けています。

  新聞各紙の記事を読んでご存知の方もいるかもしれませんが、4月19日、国立社会保障・人口問題研究所は、2015年の国勢調査に基づき2040年までの世帯数の将来推計を公表しました。ものすごく先の話に聞こえますが、今生まれた子が20歳に、40歳の人が60歳になるだけで、我々にとって決して他人事ではありません。
  全世帯に占める高齢世帯(世帯主が65歳以上)の比率は、2015年の36%から2040年には44.2%、高齢世帯に占める一人暮らしの比率は、2015年の32.6%から2040年には40%になると推計されています。2010年の推計と比較しても、2015年の65歳以上の一人暮らし世帯は24万5000世帯増加するなど、増加スピードは増しており、同研究所は「見守りや介護、日常生活上の支援策が必要になる」として対策を急ぐよう指摘しているとのことです。
この数字を見て、恐ろしい社会が訪れるのだなと感じたのは私だけではないでしょう。日本の社会保障は、家族という支え合い社会で成り立っていたのが、これはもはや過去の物語、「神話の世界」で、我々はすでに新たな社会、未知の世界に入り込んでいたのです。
  東日本大震災で祖父母と母子の3世代世帯が分離され、今も被災者住宅から脱却できないという報道を見ましたが、被災者向けの仮設住宅の間取りは2DKが最も多く、1世代もしくは核家族の仕様で、祖父母2人と母子2人が一緒に住むことが出来ず、分離を余儀なくされています。また、震災後離婚が増加したことも家族の絆が弱まったことを感じさせます。1995年の阪神淡路大震災のときにも3世代同居は数多くあり、足腰の弱っている親を1階に住まわせ亡くなったという話は数多くありましたが、家族崩壊の事例は少なかったように記憶しています。
  先ほどの推計で、私のようなベビーブーム世代の未来が読み取れます。千数百万人の我々世代4割、東京周辺に至っては5割、なんと半分近くに孤立死(孤独死ではありません)の可能性があるということです。以前、NHKの番組『無縁社会 ~"無縁死" 3万2千人の衝撃~』で、年間3万2000人が孤立死をしていると報じられていましたが、それは平均寿命を迎えている世代の生涯未婚率が約3%の時代の話であって、現在の生涯未婚率は男性が約23%、女性が約14%の時代、考えられないほど社会全体の縁が薄くなっているのです。高齢者の犯罪が増加しているのも、社会に包摂的な機能が薄らいだ市民社会に住むより、罪を犯して刑務所に入り、同じ刑務所仲間と暮らし、食事も三食困らない生活の方が良いと選ぶ無縁高齢者が増えていることが原因の一つかもしれません。刑務所の高齢化が進んでいるのはある意味当然の流れなのでしょうね。
  生涯未婚者は孤立死の可能性が高くなります。これに加え、離婚した人、子どもがいない人、子どもとの関係が保てない人など、亡くなるときに家族が存在していない人は空恐ろしい程の数になると思われます。当然、行政には「埋葬課」、「住居処理課」、「遺産処理課」といったような部署が必要となってくるでしょう。
  さて、福祉の先進国スウェーデンは、この高齢化社会のジレンマ、いやトリレンマをどう解決もしくは模索しているのでしょうか。まず、年金制度の歴史から考えてみると、イタリアやギリシャ等は古代ローマ帝国の時代、農業や商業は50歳でも70歳でも人によって死ぬまで働くことが可能でしたが、軍人は50歳を過ぎて戦うことは出来ない退役軍人、傷痍軍人への生活費のために出来たのが初の年金制度だといいます。一方、19世紀の産業革命以降、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン等多くのヨーロッパ諸国の労働者が労働運動の結果勝ち取ったのが老齢年金、労災年金であり、言葉は同じ「年金」でも運用の理念・趣旨は全く違います。日本は残念ながらイタリア、ギリシャと同じく与えられた制度で、労働組合も口を出さず、崩れる年金制度を前にして政府や厚生労働省のなすがまま、国民はされるがままで、手をこまねいて見ています。
  EUの多くの国(アングロサクソン、ゲルマン系諸国)では、福祉政策の名称はなく、社会政策と総称され、健康問題、労働問題、男女平等化推進、さらには移民の処遇に関する問題など実に広範囲に渡り、旧来型の福祉政策はどこにあるのという位影が薄くなっているようです。大学にも福祉学部などはなく、それに近い学部としてソーシャルワーク管理に関する学部がある程度のようです。定年を迎えた人の多くは一様に、「45年も働いたので仕事はもう結構、定年が待ち遠しかった」、「労働と納税を通して社会へは貢献してきたつもり。家族を養い、子どもを育て上げた。あとは自分の人生をエンジョイする」と言い、介護施設も元気なうちに見つけ、入居しても子どもは頻繁に出入りする自立した家族の関係が出来ています。自立した社会では、高齢者の貧困や虐待などもほとんどありません。仮にあったとしても、まず行動するのは日本のようにマスコミではなく行政で、住民と行政の距離はそれ程までに近く、緊密な関係で家族を代替する仕組みが出来上がっています。与えられた民主主義国日本と、勝ち取った民主主義国スウェーデンの違いは、真似ようとしても出来ない心の矜持、DNAの違いがあり、日本型福祉とは何か、将来推計データを見るたびに考えさせられます。

2019年6月28日(金)

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