アバンセライフサポート会長のつぶやき

折り合いをつける議論

   インドネシア他、東アジアから来日の技能実習生、特定技能者が今急激に増加しています。私は人材サービス事業を行ってきた関係でインドネシアとは30年余りの浅からぬお付き合いがあります。日本とインドネシアは第2次世界大戦では敵国でしたが、日本が降伏したのち、インドネシアは1945年から1949年まで旧宗主国のオランダと4年半に渡って独立戦争を行いました。その時、戦後捕虜となった旧日本兵(職業軍人)が独立戦争で大活躍、その後スカルノ初代大統領から勲章をもらい、名誉国民として3,000人余りがインドネシアに残留したようです。戦後日本軍残留兵が創設した組織が「ヤヤサン」(非営利組織、財団法人)で、その人たちの子どもや孫たちが私の会社にも数百名来日し、働いていただいた経緯があります。

   

  今回はオランダのお話をさせてください。大麻他薬物は世界中の多くの国で禁止されていますが、オランダはカナダとともに大麻が合法化された稀有な国です。カナダでは個人当たり30グラムまでOKで、大麻を入れたクッキー等若者が大量に興味を持ちそうなものに対してだけは生産禁止など一定のルールが決められています。しかし、オランダはその制約もありません。オランダでは、「大麻の利用が二次的な問題を引き起こさない限り」という条件付きで、個人による栽培、所持、利用が「非犯罪化」、「許容(許可ではない)」とされています。一応、「利用は18歳以上、栽培はひと家庭につき5株まで、所持は一人5gまで」となっていますが、逮捕されたという報道は聞いたことがないとみなさんは言います。
  私のおじがドイツ北部に住んでおり、オランダの国境線まで150km、国境を越えてもどこで越えたのかも分からないほど、EUは一体化しつつあります。その自由さに南米のみなさんの多くが憧れ、ヨーロッパを目指すのは当然ですね。オランダは年間労働時間が世界で最も短い国として知られていますが、ワークシェアリングの考え方には感心させられます。週休2日では良い人材が集まらず、週休3日の会社も珍しくありません。職種で賃金に差は設けてありますが、同じ仕事であれば同一労働同一賃金で男女の差などもなく、パートも社員も原則同一賃金です。すごいですね。日本の年間労働時間はおよそ 1,700 時間、オランダはおよそ1,378時間です。夜7時を過ぎるとほとんどのスーパーは開いていない。日曜も休み。コンビニなんてほぼ見かけない。生産性の低い仕事は国民みんなが少し我慢して、生産性を上げようとします。日本では労働は苦行に近く、とことん頑張る、頑張らせようとしますね。だから定年になると燃え尽き症候群になって生きる意味を見失う。利用者として介護施設に入っても女性は会話があり、タオルや衣類を畳んだりしてエンジョイしますが、男性は濡れ落ち葉のごとくヒマ、ヒマ、ヒマと消耗し尽くした人が多いように感じます。オランダ人は様々な工夫をして自分の時間や家族との時間を現役時代から味わおう、自分の人生を味わいつくそうとします。どんな場合も仕事半分、家族友人との時間が半分あり、「幸せとはなにか」を考えさせられますね。

  福祉の現場でもオランダは割り切っています。患者や利用者は消費者であり、医療福祉という商品・サービスの受益者で、医療福祉事業者はサービス提供者です。サービス提供者はサービス受益者が望むものを提供する必要があり、極端な話になりますが、もし受益者が自殺を望んだ時、サービス提供者はその希望に沿うべく対応が求められます。オランダ人は割り切っています。医学的な同意のもと、生命終結、生命短縮、そして延命治療の中止などを含めると高齢死亡者の60%が積極的・消極的の区別はありますが、安楽死を選んでいるといいます。妊娠中胎児DNA鑑定で異常が見つかれば、約80%の人が妊娠中絶を選ぶといいます。一方日本では、ほぼ脳死状態で胃瘻をしているおばあちゃんを介護する奥さんに「なぜ延命拒否しなかったの」と聞くと、「家族の前でそんなこと言えなかった」といいます。出生前の命は間引いても犯罪ではありませんが、死に行く人には医師も看護師も介護士も関わりたくない。それどころか無駄と分かっていて意味の無い延命処置を毎月100万円ほどかけて徹底的にやり尽くす。遺族も誰も文句も言わず、感謝までしてくれる。「医療はうなぎ上り」これで良いのでしょうかね。合理主義であるゲルマン人とウエットな日本人、どこかで折り合いをつける議論が出てきてほしいと願うのは私だけではありませんよね。

  

2022年10月04日(火)

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