アバンセライフサポート・会長のつぶやき

『希望』がキーワード

  

   コロナ禍で社会的弱者と言われる人たちにしわ寄せがきており、不安心理から生まれてくる赤ちゃんが急激に減っています。コロナ前の2019年の出生数はおよそ86万5千人ですが、2020年はおよそ84万人(厚生労働省「令和2年人口動態統計月報年計(概数)」より)、2021年は一気に80万人を割り込む見通しが高まっています。2~3年後は託児所、保育園の倒産がそこかしこで発生しそうですね。これは数年後の危機ですが、今年は上場企業の決算発表を見ても、コロナで救われた業種、ダメージを受けた業種と様々でまだら模様でした。

  巣ごもり需要を取り込んだのが家電量販店で、ヤマダ電機は営業利益が前年比2.4倍、ケーズデンキは前年比1.6倍とまさに「人の不幸は蜜の味」状態でした。一方で化粧品業界は総崩れ、服の需要が減ったアパレル業界は上場の24社内の19社が前年より業績は悪化しています。もちろん、ホテル、レストラン、旅行社、鉄道、航空会社などは過去に例がないほどの赤字決算となっている企業もみられ、建設業界は大手4社と言われる清水建設、大林組、大成建設、鹿島建設はいずれも売上げが 15%ほど減り、営業利益も 15~25%減少しています。コロナ禍のこの惨状で家を建てよう、子どもを産もうと考える人が少ないのは仕方がないですね。「希望」を持つことがいかに大切かを実感します。ホテル業界で唯一強さを見せているアパホテルは、一泊2,500円キャンペーンを行い、客室ビデオ、大浴場やスパも無料で利用できるようにし、映画館代わりに昼間の利用を促す営業方針に切り替え(私も利用しましたがなかなか良いですね)お客様に提示、なんとか黒字決算にまとめていますが、正常なホテルビジネスではなさそうですね。株式市場や不動産は活況を呈しているようですが、実体経済の値動きではなく、各国が紙幣を輪転機で刷りまくった結果だぶついたお金が株式や土地に回っただけで、状況が変われば一気に冷え込む可能性があります(リーマンショックの時を考えるとよく分かります。

  オリンピックは一過性のイベントのため気にしても始まりませんが、コロナ以降今秋から来年の春にかけて企業も国家も風まかせの難しい舵取りが求められます。これだけ人手が余り、留学生に至っては 10~20%ほどしか正規就職が決まらないというのに、介護は慢性的な人手不足が解消されませんね。日本の高齢化は2045年位まで今の状況が続くと、その時には介護人材が200万人程度不足すると言われています。毎年新たに高齢者介護業界へ就職する人がおよそ22万人いますが、退職者がおよそ20万人、実質2万人ほどしか増えていません。退職理由は賃金と人間関係がほとんどだといいますが、最も大きな理由はバーンアウト(燃え尽き)だと私は考えています。利用者さんは高齢者で、認知症の方も多く、介護が必要だから私たちの施設に来られますが、人間関係ができ、お世話をさせていただいた方が数年の間に寝たきりになり亡くなられる。その喪失感が辛くて心にダメージが残り、違った業界に転職される方が多いのでしょうね。これも同じく「希望」がキーワードになりそうです。「ありがとう」と感謝の言葉をいただき、またがんばろうと気持ちは高ぶるが、昨日出来たことが今日は出来ない。明日はどうなるのか、この心細い喪失感、その光景を毎日見ているのは結構辛いものがあります。老化から死へのワンウェイを歩むお年寄りを相手とした「希望」という言葉の似合わない職業の辛さなのかもしれませんね。しかし、幸せに人生を全うしていただく、どんなに波乱万丈な人生もしくは悔いの残った人生であっても、安らかに穏やかに人生の帳尻を合わせ見送ってあげる温かい社会づくりのキーになる職業だと私たちは考えていますが、現実は大変です。政治家のおっしゃる「誰一人として取り残さない社会を目指して」このSDGs(持続可能な社会)の基本精神を体現しているこの職業をもっともっと社会全体で大切に維持していきたいものですね。

2021年6月29日(火)

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