アバンセライフサポート・会長のつぶやき

視野を広げて可能性を広げる。

  7月9日午後から13日午前にかけ南米ペルーの首都リマ市に出張、エージェント調査を始め様々な人たちと面談しましたが、3日目に訪問した日系人専門の病院と介護施設に私は強い印象、そして感銘を受けました。リマを北に40km位パンアメリカンハイウェイを走ると(この道は、北はアラスカ、カナダ、アメリカから、南米のチリ、アルゼンチンの先端まで通じる長大な道路です。アメリカのルート66のようにこの道には様々な物語があります。)

   

ファベーラ(貧民街)が出現、それも行けども行けどもバラックが続きます。車で10km近く走ってようやく目的の介護施設に到着、パンアメリカン道路沿いではありますが、貧民窟のど真ん中、車から降りるのも憚られる一種異様な地域でした。この地域に住む人たちは戸籍がありませんから、何万人住んでいるのかも正確には分かりません。おそらく50~80万人位は居るのでしょうね。

ペルーのファベーラ(貧民街)

ペルーのファベーラ(貧民街)

  「よくこのような凄まじい場所に病院、介護施設を建設したものですね」と日系人の施設長に尋ねると、「このファベーラはアンデスから降りてきた人たちが住み着き、ここ30年位で成立した比較的新しい移住区で、この病院が設立されたときにはまだこのような貧民街ではなく、どこにでもある砂漠のオアシスだった」と言います。私も思い出しましたが、1990年から2000年までの10年間、日系人のアルベルト・フジモリ氏がペルー大統領として君臨、アンデスで農業を営んでいた共産主義者(センデロ・ルミノソ)のテロ組織を徹底的に鎮圧、コカや大麻栽培をしていた人たちを始め多くのインディオのみなさんを弾圧、彼らはやむを得ずアンデスの山を降り、都市周辺に住むことになりました。パンアメリカン道路沿いの場所に住み着いた人たちも、元々はアンデスの農業従事者だったようです。もともと焼畑農業程度の経験しかない人たちで、技術もない、資本もない、教育も受けていない人たちですから、貧民窟を形成して互いに助け合って生きていくしか方法がなかったのですね。1996年在ペルー日本大使公邸立てこもり事件を思い出しますね。
「みんなで歩けば怖くない」と我々は道路沿いの危なくない所を少し歩きました。大工さんが小屋を建てていて、「一部屋建ててもらうといくらする」と聞くと、日本円でおよそ3万円だと言います。2DKで3部屋建てると約10万円とのことです。年間降水量50mmの国だとこれで OK なのです。バール(屋台、一膳飯屋のようなもの)で何かを食べようとすると、通訳さんが「駄目です。施設は上下水道が通っているが、彼らの居住区には無く、便所は砂漠の砂に吸い込まれ、上水は全て自分たちで井戸を掘って調達、上水道と下水道が地下で繋がっている。そこで調理したものは衛生上問題だらけなので絶対に食べてはいけない。」と言います。当然ですよね。水は安全だと思っている私たち日本人の価値観に問題があったようです。

  その街には仕事らしい仕事がなく、働くといっても街に出ての下働きか泥棒、先ほどの大工さんのような地域内での便利屋さんしかありません。未来に希望を感じられず、毎日を刹那的に過ごさざるを得ない人たち。聞いてみると失業率は 50%を超えると言い、ファベーラの中に成功者や身近なメンターがいないため、勉強しようと考えることもなく、頑張る意味もよく分からないようです。どこかで聞いた話ですが、人類、霊長類の DNAは99%以上同じで、白人も黒人も黄色人種もほとんど変わらないと言います。バラク・オバマさん始め様々なミックスの人たちを見ていてそう感じますね。人は真似て学んで成長する動物ですから、環境次第でものすごく成長します。一つのファベーラに住む80万人の1%がその気になれば8,000人、介護施設に住む日系人の利用者さんが先生になり、ファベーラの彼らに日本語を教える。仕上げの日本語は私たちベビーブーム世代の日本人が現地に馳せ参じ、日本語検定4級位まで教え、居住区に住む100人に1人位を育て、ファベーラの彼らが日本の福祉現場で働ければ、例えば20歳で来日、25年間働けば45歳で年金は約8万円位、ペルーでの生活に困ることはありません。彼ら彼女らが帰国し、ペルー国、ペルー国民のために働くことが出来れば、日本の福祉現場も助かり、ペルーの貧民窟も削減、まさに誰ひとり見捨てることのないSDGs社会が出現します。このように風穴を開ければ、地球的視点で活性化する輝かしい未来が出現することでしょう。日本の恒久的な福祉の人手不足と開発途上国の構造的な不幸に対し、あの病院、施設が今とは違う新しい未来を切り開いてくれます。相互の満足度が高ければ高いほどレバレッジが大きく働き、顕著なアウトプットが出現します。一見自分たちとは関係のない世界だと思いがちですが、こうやって視野を広げると、私たち業界の可能性も大きく広がっていきますね。

  

2022年08月05日(金)

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