アバンセライフサポート会長のつぶやき

大きな社会変革の分水嶺に差し掛かっている

  荒井勝喜首相秘書官が罷免されましたね。頭が良くて硬骨漢で潔癖、まさに「男の中の男」を絵に描いたような人でしたが、その性格が裏目に出ましたね。LGBTなど性的少数者や同性婚の在り方をめぐって馴染みの記者に非公式取材の場でオフレコを前提のお話で、「隣に住んでいたら嫌だ。首相秘書官室は全員反対で、私の身の回りも反対だ。こんな制度が導入されたら国を捨てる人、この国に居たくないと言って反対する人は結構いる。」と語ったとのことです。オフレコですから、普通に考えるとこの発言は記事にならないのですが、功名心に逸る記者が一人や二人いるもので、みんなで渡れば怖くないとばかりに各社一斉に報道、大きく波紋が広がり、5月に開催される先進 7 カ国サミットの主催国議長である岸田首相には欧米等自由主義国に共通の人権感覚が求められており、今回の出来事に対応せざるを得なかったようです。荒井氏は、自らの人生観を述べただけで悪意はなかったようですが、このような発言やねじれは日常的に生じていることをみなさんもご承知でしょう。よくある話で、自分が感じたことを「みんながそう言っている」という人がいて、「他には誰が言っているの」と聞くと、自分の後輩の一人だけだった。それも「〇〇さんもそう思うよね」と強制された同意だったことがあります。まさに荒井氏と同じでみんなを巻き込み、自らの意見を補強したい臆病者の論理なのでしょうね。

   

  しかし、言わなければ分からないのも事実で、私の知人でこんな話もありました。ある時彼が仕事を終えて帰宅すると、便器の座り蓋が上げてあります。自宅には奥さんと二人の娘さんのみで、蓋を上げなければならない男性はいません。これが度重なり、彼は心配になってきました。「誰か男が出入りしているのではないか。」と何度も疑心暗鬼が続き、心配で夜も眠れず、彼はノイローゼになっていきます。彼の変化に気づいた奥さんは、「近頃おかしいわよ。会社で何かあったの?」と聞き、彼は便器の蓋の話をします。「便器の蓋がいつも上げてあるのはなぜだ?男が出入りしているのか?」と。奥さんは笑い出しました。「あなたはせっかちだから、便器の蓋を上げておいてすぐ用を足せるように子どもたちにも言ってあるの。」と言い、笑い話で終わりましたが、当の本人は「離婚まで考えた」と言います。夫婦の阿吽の呼吸なんてあてにならず、言葉の重さを感じたものです。ましてや他人同士の職場です。互いの理解、共感の輪を強固なものにするには熱意と時間がかかるものなのでしょう。世代が違うともっとすごいことが起こりますよ。私が孫に桃太郎の話をしている時、「お婆さんが川へ洗濯に行って」と言うと、「なぜ川まで行って洗うの?洗濯機を使わないの?電気代が高いから?」などと質問を投げかけてきます。「大きな桃が流れてきたので家に持ち帰り」と言うと、「やーそれは泥棒だよ。警察に届けなきゃ。」と孫は言います。凡庸な頭脳しか持たない私は全くついていけません。記憶力は衰え、孫の名前まで忘れ間違える昨今、大人程の気配りのない孫たちの口撃に老醜をさらす72歳(あと数ヶ月で73歳)であります。

  ベースアップの季節で日本中が賃上げで沸き立っていますが、我々福祉業界は介護保険制度下の賃金制度で、民主主義ではなく専制主義下の天の声で決まる賃金で静かな限りです。世間では、賃金とは生活のためのお金か?働いた成果配分か?職制とは何か?もっと踏み込んで考えると「働く」とは何か?AI が進むと、20年後の社会では労働時間が現在の半分で済むといいます。平均寿命が 95歳になり、有り余る余暇時間。「人生は壮大な暇つぶしだ」と言った哲学者がいましたが、私たち福祉に関わる者には、生きがいとは、生きることそのものが何の為なのかが深く問われる時代なのかもしれません。難しく言えば、それほど大きな社会変革の分水嶺に差し掛かっているのです。それであっても1年でも1日でも長生きしたい人間。それって何なのでしょうね。

  

2023年03月02日(木)

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