アバンセライフサポート社長のつぶやき

夢と勇気とサムマネー

  先日の日本経済新聞に、「イスラエルの高い起業率」についての記事が出ていました。イスラエルでは、大学卒業後に自営業、会社を設立する、NPOを立ち上げる人が60%以上で、会社に就職する人たち、役所に勤める人たちの方が少数派だというのです。
  イスラエルは、紀元前千数百年頃エジプトに居住した人たちで、モーゼに導かれてエジプトを出てカナンの地に住み、紀元前1012年頃、サウルによってイスラエル王国を建設しました。詳しい説明は省きますが、紀元前722年にその王国は滅亡したようです。その後、20世紀初めから始まったシオニズム(イスラエルの地に故郷を再建しよう)と呼ばれる運動を経て、1948年イスラエル国家が建設されました。しかし、2千数百年前から住んでいるパレスチナ人にとっては、弥生時代に住んでいたから土地を返せと言われても納得できるものではなく、周辺国との紛争は現在も、そして未来も止むことはなさそうです。

  イスラエル国内においても、アメリカ系、ブラジル系、フランス系、ドイツ系など実に多くのルーツを持ったイスラエル人が住んでおり、宗教も価値観も様々な人たちが混在、イスラエル国内は必然的に多文化社会、自らの力で生きていかざるを得ない環境にあります。多文化社会で常に危機感、緊張感を持って生きているイスラエル国民と、外国人が歩いているだけでチラチラ見てしまう日本人(ちなみに日本人新卒者の起業率は1%以下)では、最初から立つ位置が違うようですね。

  日本の現状を考えてみましょう。4月16日付の日経新聞朝刊に「厚生年金加入、70歳以降も 厚労省が納付義務を検討」という見出しのトップ記事がありました。総務省の2018年の労働力調査では、働く高齢者が急増、70~74歳の役員ではない雇用者は129万人、75歳以上も53万人いて、仕事をしている高齢者のおよそ4割は「働けるうちはいつまでも」と答えています。
高齢者雇用の一方、従業員数501人以上の企業では、週20時間以上で月額賃金8.8万円以上などの条件を満たせば、厚生年金は強制加入となっていますね。
2018年の就業者数は、10年前に比べ255万人増加、65歳以上の就業者は309万人増加しています。いよいよ「1億総活躍社会」の到来ですね。さらに、4月19日付日本経済新聞によると、介護保険料負担が急速に増しており、「健康保険組合加入者1人当たりの年間納付額の平均は約6千円増え、初めて年10万円を超えた。現役世代に重圧がかかっている。」としています。
医療費は2010年から2018年の間に約2割増えましたが、介護給付は5割増、保険料は65歳以上の高齢者の総数と40~64歳の現役世代の総数の比率で決まるので、今後も高齢化社会が続く限り(続くに決まっていますが)、介護保険料は上がり続けることとなります。

  さて、施設経営者として苦しいのは、「入る」の未来が描けないだけではなく、「出る」の未来も大変なことです。人件費の総額を売り上げで割れば、労働分配率が出てきます。労働分配率が一定だとして給与を上げるということは、生産性も一緒に上がらなければ人件費倒産します。生産性と賃金はコインの裏と表のような関係になります。人手不足と賃金が連動しているのは自明で、やるべき事は生産性を上げること、介護保険は定額なので、賃金を上げるには介護保険収入以外の収入の道をつけること、そして数値管理を意識した経営管理を行うことです。介護事業は今後より一層難しい時代に向かっていくことが予想され、私たち介護事業者は崖っぷちに追い詰められつつあるのかもしれません。

  困ったもので、ここに至っても多くの若者は「安定した幸せ」を望んでいます。かつてイギリスは、「ゆりかごから墓場まで」と言われ、手厚い社会保障や基幹産業の多くを国営化、費用は植民地からの上納金で賄い、国民はそれを当然のこととして働かず、企業は既得権に乗っかり、今に至って行き詰まりつつあります。ヨーロッパの多くの国に尊敬されていたあの国が、EUから罵倒、糾弾される国に成り下がっています。
日本とイギリス、島国の似た者同士の国に今一度求められるものは、イギリス出身の喜劇俳優、チャールズ・チャップリンの言葉、「夢と勇気とサムマネー」かもしれませんね。

2019年5月31日(金)

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