少し動くことを期待
10月初旬フィリピンに出張し、私が携わっているフィリピン法人の幹部社員のみなさんと夕食を食べながら懇談、今後について話し合いました。現在、現地には日本語学校と人材紹介会社の2社があり、今回は海外への送り出し認可を取得し、フィリピンの方々に日本やヨーロッパで活躍していただけるよう3社目の新会社を設立するために訪問しました。そこで、以前日本で一緒に働き、現在は母国フィリピンに戻り活躍されている女性が再び私たちと一緒に新会社で働いてくださることになり、彼女の夫もこの日の会食に同席してくれました。彼も以前は日本で一緒に働き、現在はフィリピンで某大企業に勤務、この会社の本社はアメリカ・ニュージャージー州ニューブランズウィックにあり、まさにアメリカン・ドリームを体現した会社として知られています。世界中から優秀な人材が集まるこの会社は、目標をクリアした人には報酬で手厚く報いる。しかし、付いて来られない人たちの多くは辞めざるを得ない。40歳の彼は言います。「後ろからどんどん若い人たちが追いかけてくる。僕もあと何年もつのかな?」 これが成果主義の国アメリカです。がんばっている人しか評価されない。彼の会社の歴史は勝者の歴史なのですね。
その逆も紹介させてください。日本には日雇い労働者のまちとして東京山谷、横浜寿町、名古屋笹島、大阪釜ヶ崎(あいりん地区)の4か所があります。2年ほど前、横浜寿町の不動産屋から簡易旅館(通称どや)を買わないかと言われ、少しその気になって訪問しました。横浜中華街や横浜スタジアムからほど近い場所にある有名な寄せ場ですが、そこに住む人の多くが生活保護受給者です。非常に特殊なまちです。まず、寿町には信号がありません。通過道路ではなく、そこに住む人たちだけで構成されるコミュニティで、外部からの来入者はほとんどいません。自販機は50円コーヒー、100円チューハイ、食堂も300円ランチ、1円パチンコ、そこかしこに訪問介護、デイサービス、小規模な病院があります。1か月12万円程度の生活保護費でまかない、同じ環境の仲間もたくさんいて、それなりに安心して死ぬまで暮らすことが出来ます。他の地域では貧困問題が社会問題になって、長時間労働、ダブルワークでようやく生きていける人が多くいるのに、ここはまさに別世界で、福祉のまちとして合理的にセーフティーネットが機能しています。生活保護の可処分所得もよそよりずっと高い。アメリカのダウンタウンやラストベルト地帯もこんな感じなのかと思わせるほど、人間は開き直ってこのまちに溶け込んでしまうと、こんなに幸せに過ごせるものです。
もともとアメリカ人、ロシア人、中国人などは働くことがあまり好きな国ではありません。他人を働かせて利鞘で生きていくことが大好きな人たちです。勤労の美徳はドイツ人や日本人には当てはまりますが、彼らの国には当てはまりません。日本もこの30年で1億総中流から様変わりしてきましたね。一部の富裕層のみが勝ち組として闊歩、大多数の庶民派あてにならない年金にすがり、老後を暮らすという構図になっています。今回の衆議院議員選挙の結果次第では少し動くことを期待しながら、清き一票を投じてみましょうね(本原稿は投票日前に執筆)。
2024年10月31日(木)