アバンセライフサポート社長のつぶやき

多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい

    スウェーデンの人々が大切にしている「ラーゴム」という考え方について、少しご紹介させてください。これは「多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい」という意味で、日本の神道の「自然との調和」や「控えめな美徳」にも通じるところがあります。
例えば、昔のバイキングたちが航海の途中で船上に集まり、牛の角で作られた「バイキングホーン」という杯でお酒を回し飲みしたという話があります。その際、誰もが自分にとってちょうどいい量だけを飲み、最後の人までちゃんと行き渡るように気を配ったそうです。みんなが気持ちよく楽しめるようにする――それが「ラーゴム」の精神なんですね。
    さて、スウェーデンの人々の考え方に触れる前に、現代の日本社会について少し考えてみたいと思います。あるアメリカ人の学者が行った「ネズミのユートピア」という実験があります。
    広さが決まった空間に、オス4匹・メス4匹のネズミを入れ、温度や湿度、食べ物、運動環境などを完璧に整えて飼育を始めました。最初は順調に増えていき、320匹まで達しましたが、そこから増加のペースが鈍り始めます。やがて、強いネズミが自分のスペースを広げ、弱いネズミは隅に追いやられていきました。
    そして、数が2,000匹を超えた頃、状況は一変します。強いネズミは攻撃的になり、弱いネズミは争いを避けて孤立し、仲間とのつながりも失っていきました。繁殖も止まり、元気だったネズミたちも活力を失い、最終的にはすべてのネズミがいなくなってしまったのです。この実験は4回行われ、すべて同じ結果だったそうです。
    この話から、現代の日本社会においても、過度な競争社会がもたらす孤立や無力感について考えさせられます。強い者が作る制度が、弱い者の心に届かないこともあるのかもしれません。
    では、同じような哲学や宗教的な価値観を持つスウェーデンの人々が、なぜより高い「幸せ感」を持っているのでしょうか?
    例えば、国際調査によると「自分が政治に影響を与えられる」と感じている人の割合は、スウェーデンでは85.1%にも達しています。これは世界でもトップクラスです。一方、日本では27.2%と、かなり低い数字です。
    この違いが、社会への信頼感や自分の存在意義、そして日々の幸福感にもつながっているのかもしれませんね。

「仕事は収入を得るための手段でしかない」という意見への賛成者の割合の棒グラフ

出所:ISSP 2015


自分が政治に影響を与えられると思う人の割合

1 スウェーデン 86.1%
2 イスラエル 46.9%
3 韓国 44.5%
4 オランダ 41.9%
5 ドイツ 41.4%
6 マレーシア 40.4%
7 カナダ 39.9%
8 シンガポール 39.8%
     
14 日本 27.2%

出所:Pew Research Center “Global Attitudes & Trends”Spring 2022.

 

あとは来月お話しします。一緒に勉強しましょう。

 

2025年9月30日(火)

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